カウンセラーのためのレジリエンス講話
目次
児童生徒さん向けレジリエンス講話 おたよりのネタとしてもどうぞ
思います。
1・レジリエンスってなに?
resilience「弾性」「縮んだものが元に戻ろうとする力」もともとは理科の言葉。
「こころの自然回復力」という意味でも使われるようになる。
必要以上に失敗を引きずらず、また頑張ろうと思えるようになる力。
物事が思い通りにいかず落ち込んだ時に、気持ちを切り変えてやり直そうとする力。
生まれつきの「才能」などではなく、方法を知ることで上手になれる「技術」です。
例えば
野球やサッカーを考えてみましょう。
運動神経はもちろん関係するけど
ボールの蹴り方や方や投げ方を知っているかどうかや
どれくらい練習したのかという事も
上手くできるかどうかに関係してきます。
落ち込んだ時や思い通りにいかない事に出会った時
そこからどう立ち直るかもこれと同じです。
上手に自分を立ち直らせる方法を学んでこれからの生活に生かしていきましょう。
レジリエンスマッスルという言葉があります。
こころの立ち直る力を
筋肉に例えた言葉です
話を分かり易くするために
ここでもこのたとえをを使っていきたいと思います。
実際の筋トレにもいろいろ種類があるように
こころの筋トレにもいろいろな種類があります。
重い重りを使えば短い時間で強い筋肉が作れますが
いきなり重い重りを使うと
逆に体を壊してしまう場合もあります。
今回はたくさんのトレーニングの方法を紹介しますので
色々試してみて
ぜひ自分に合ったものを見つけてみてください。
2・レジリエンスってどうやって強くするの?
レジリエンスが高い人は感情の整理が上手な人
実際にレジリエンスが高い人を調べてみると
いくつかの共通点があることが分かってきました。
その一つが
①「レジリエンスが高い人は感情のコントロールが上手」
です。
たしかに何かにつまずいたときに
いつまでも落ち込んだ気持ちを切り替えられずにいたら
再び何かに挑戦しようと思う事は難しいのかもしれません。
そこで初めのトレーニングとしては
気持ちを上手に切りかえて、立ち直る力を身に付けるために。
自分の気持ちを紙に書く
というものを紹介したいと思います
☆やってみよう
その日に起きた出来事とそれにまつわる感情を5分間書き続ける。 手を止めないことがポイントです。 良い事でも悪い事でも、どちらでもなくても大丈夫です。 「こんなこと書いちゃっていいのかな」ということは考えずに とにかく書き出してみて下さい。 「あ~書くこと無いなあ」と思ったら ”あー書くこと無いなあ”と書いてください |
本当は10分くらいかけてやってほしいのですが
今日は時間の都合から3分で終わりにしました。
ぜひうちに帰って一度はもう少し長い時間で挑戦してみて下さい
また違った感想が得られるかもしれません。
例えばイライラした時の事を例にしてみますと
2~3分も書くと「ふう」ともう書くことないな
と一息つけることになることもあります。
よっぽど「絶対に許せない」と思っていたことも
「結構この程度か」などと
ここで少し客観的になる事が出来ます。
またこの間は5分書いてもまだ気持ちが収まらなかったけど
今回は2分で終わっちゃった
などと一つの物差しの代わりになってくれる
と言う効果もあります。
さらに思いついた言葉をなんでも書いてください
と言いましたが、実際に書いてみると
例えば「死ね」は言い過ぎだな。とか
自分で書いた言葉を眺めてみることで
また新たな感情がわいてくるのが分かるかと思います。
自分の感情から一歩距離を取りことで
感情のコントロールが上手に出来るようになると思います。
余談ですが…ボキャブラリーが多いとメンタルが安定しやすいってホント?
外科の先生はホラー映画が怖くない話。
いま感情を言葉にするというトレーニングを紹介いたしましたが
それにまつわるオマケの話を少ししたいと思います。
外科のお医者さんは手術の時に
人間のお腹の中などを見るわけですが
やはり「気持ち悪い」といった感じはないそうです
もちろん見慣れているという事もあるとは思いますが。
それはなぜかと言えば
これは肝臓、これは膵臓、今飛び出てきた骨は○○で
ここら辺の血管は◇◇。いまはそこから血が出てきているな。
と言った風に体の細かな部分の名前を知っている
ということが大きいのだそうです。
人間は得体のしれないものや
ぐちゃぐちゃしていてまとまりがない物
そういったものに対して
感情的になって混乱してしまうという傾向があるようです。
先ほどの人間の感情の話もこれと同じで
自分は今イライラしているのか
不安なのか、さみしいのか悲しいのか
はっきりと言葉にすることで
自分の内側に冷静に対処していく事が出来る。
言葉にするという事は気持ちを落ち着けることに
とても重要であるというお話でした。
余談ついで。感情は悪者ではない
もう一つ付け足しで話すと
感情は悪者ではないです。
感情を何でもかんでも言葉にしなくてはいけない
という事ではありません。
例えばしみじみ夕陽を眺めている時
好きな人と一緒にいる時
どうにも言い表すことが出来ない感情があると思います。
それらの感情をいちいち言葉にせず
その感情にただ浸ること
これは悪い事ではありません。
ただ
不安や悲しみなど主にネガティブな感情に
いつまでもとらわれることで
同じように悩まされ続け
再び立ち上がる事が事が出来ないでいるのなら
それらの出来事に上手に対処していくために
一度自分を振り返ってみると良いという話です。
要はバランスです。
「悔しい」「やっちまったー」
みたいな感情もあるからこそ
次に頑張れるバネになもなります。
何も感じない機械みたいな人間を
目指そうとしているのではありません。
余談ですが…感情と言葉について 映画「ウォーリー」と小説「1984」の描く近未来
先ほどは感情を言葉にしようというたとえ話をしましたが
今度は出来るだけ感情を言葉にすることをやめたら
人はどうなるのかと言う話をします。
これは実際に実験などは出来ないので
小説と映画の話になります。
皆さんの中に「ウォーリー」という映画を見たことがある人はいるでしょうか。
近未来を描いた映画で
その世界ではコンピューターが全て快適に管理をしてくれていて
人間は自動で動く椅子の上に座っていればよい
食事は手元まで自動で用意されるし
熱いとか寒いといったこともない。
見たい番組は常に目の前にあるスクリーンに映し出されています。
人間は色白で肥満体系で常にうつろな表情をしています。
ここでは言葉の問題は出てきませんが
皆さんがよく知っていると思いましたので
最初に例を挙げてみました。
そして
同じようにとても快適な社会のはずなんだけど
本当に幸せなのか疑問がある近未来を描いた小説に
ジョージオーウェルという人が書いた1984
という小説があります。
ここではコンピューターではなく
大きな秘密組織が様々な方法で人々を管理しようとしています。
いたるところに監視カメラが設置され
人々の生活は安全に管理されています。
さらにその秘密組織は
ニュースピークといって
人々が使う言葉を徐々に少なくしていく
という決まりを作っています。
例えば「うれしい」と「楽しい」は意味が似ているから
「うれしい」だけに統一してしまおうとか
そういったことがなされています。
そうすると人はちょっとしたことで
ものすごく不安になったり
イライラしたりするようになります。
おそらくそういう人間の表情は最初に紹介した映画
ウォーリーに出てくる人間と同じく
どこかうつろな表情をしているのではないかと思います。
話をまとめると出来るだけ多くの言葉で
自分の感情を言葉にするという事は
精神を安定させることにも重要ですよ
というおまけの話をしました。
②レジリエンスが高い人は自信(自己肯定感)がある人。ポジティブな人
次のトレーニングは
レジリエンスが高い人を調べていたら
前向きな考え方の人が多い事が分かりました。
確かにそれはそうですよね
そこで次のこころの筋トレは
前向きな考え方のクセを付ける
そのやり方になります。
前向きな考え方(ポジティブシンキング)を身に付けるために。
☆やってみよう
感謝の気持ちを表現してみよう 感謝は人にでも動物にでも物に対してでも どんなものに感謝してもらっても構いません。 |
多く感謝する人は
免疫力が上がり風邪をひきにくくなったり
皆さんにはあまり関係がないかもしれませんが
血圧が下がったり
幸福感を感じやすくなったり
生活に対する満足度を上げてくれたり
共感する力を高めてくれたりもするそうです
ただいきなり感謝と言うと
難しく感じる人もいるかもしれません
今日は少し軽めの重りも紹介したいと思います
☆やってみよう
私は本当に幸せ者です。 3食食べられているし… |
これに続けて書いてみてください。
本当に冗談半分に書いてもらっても大丈夫です
すった息を吐くことが出来る。
右足を出したら左足を出す事が出来る。
などなど当たり前のことを書いてくれてもよいです。
誰かに対する感謝を考えたり
自分が恵まれている事を考えたりする時
暗い気持ちになる人は少ないように思います。
これらのことを考えようとすると
自然と良い思い出が浮かんできて
前向きな考え方のクセを付ける事が出来ると思います。
余談ですが…世界がもし100人の村だったら…
銀行に貯金があり財布にお金が入っていて家のどこかに小銭が転がっていたら…
もう20年も前の本ですがとても読みやすく良い本です
52人が女性で48人が男性です
と書かれると分かり易いですよね
その他30人が子供で70人が大人らしいです
この本が出た頃と今とではもしかしたら数字に違いが出ているかもしれません
さっきの銀行に貯金が…の答えは
もっとも豊かな8人のうちの一人に入れるそうです
もちろんこの本は自分より恵まれていない人のことを
知って得意になる本ではありません
恵まれている自分を知る事が出来れば
では自分は恵んでくれた周囲の環境に対して
何が出来るかを考える
そんなきっかけを与えてくれる本です。
☆やってみよう
シチュエーションセレクション (楽しい週末の予定を立ててみよう) |
これは実際にメンタルがタフな人が何をしていたのか調べることで
分かった方法です。
もしかしたら少し単純すぎて子供っぽく感じてしまうかもしれません
しかし週に一度この方法を試してみるだけで
数日間はストレスに強い心の状態を保つ事が出来たという研究もあるほど
効果が高いやり方です。
ぜひ一度は試してみてほしいです。
実際に実現可能かどうかは関係ありません。
ただしあまりに現実離れした物は控えた方が良いです。
家族で旅行に出かける。
一人静かな読書の時間を過ごす。
美味しい物を好きなだけ食べる。
どんなことでも構いません。
ぜひとも試してみて下さい。
余談ですが…毎朝していることで自信を無くしている行動とは?ある心理学実験の話
鏡は悟りの具にあらず迷いの具なり
私も含めなぜ人が鏡を見るかと言ったら
自分の格好を良くしたいから
つまり自己肯定感を上げようとして見ていると思います。
寝癖が付いていないか
鼻毛が出ていないか
でもその行為が逆に自信を無くす結果につながっていましたという話でした。
外国で一年間鏡を見ないという実験をした人がいたそうです
すると幸福感が上がったそうです。
しかし逆に鏡を見ない事で
外に出にくくなったという人もいたので
結局はバランスが大切なのかもしれません。
ちょっとしたお話でした。
<さらにもう一歩進めて。少しハードなトレーニング方法のご紹介>
今度は少し重い重りを使ったこころの筋トレの紹介です。
今度は苦手なことや嫌な出来事などについて
細かく細かく思い出して紙に書いてみる。という方法をご紹介いたします。
自分を困らせている(困らせていた)相手や出来事をよ~く観察、分析してみる。
例えば…誰かと口喧嘩してしまった場合。
自分は何を話したか。自分は何を話せなかったか。相手は何を話したか。自分は何を感じ、周りには誰がいたか。周りの人は何か話したか。
などなど。細かなところまで積極的に思い出してみる。
この時に次からはこうしようとか
ここが悪かったからだ
といった上手な解決策は
思い浮かばなくてもいいそうです。
丁寧に振り返ることが
心を強くするトレーニングになっているようです。
例えば私の場合奥さん(誰か)とけんかをしても
ああいう人だから
とか
イライラしていたのかな
などざっくり結論付けを済ませると
まあ気晴らしに何か仕事でもするか
など軽く受け流していたことも少なくないように思います。
ただし別にそういった対処法が悪い事だ
という事ではないと思います。
その方法で毎日暮らす事が出来ていれば
それはその人なりの対処術であり
必ず今回の詳しく振り返る方法をとらなくてはいけない
と言う事ではありません。
ただ
もし同じような場面で
同じ人に長い間困らされ続けている
などどいう場合には
この方法も試してみると良いのかもしれません。
しかし…少し大変かもしれません。
初めの方で重い重りを使えば効果もあるが、逆効果になることもあると
お話ししました。
ああすればよかった…どうしていつもこうなんだ…もう取り返しがつかない…
など「後悔する」こととは違います。
このやり方は間違いなく効果がありますが
みんなにやりやすい方法ではないかもしれません
つらくなったら、頼れる人と一緒にやるか
初めは軽い重りから初めて
筋肉がついてきたらまた挑戦してみるのも
良いかもしれません。
☆やってみよう
苦手なことや嫌な思い出、後悔していることについて書いてみる |
<その他、簡単にできることでレジリエンスを高めるもの7つ>
①基本的な生活習慣を整える(バランスの良い食事。よく寝ること。)
②笑う(お笑いの動画を20分見るでもよい。声に出して笑わなくともよいです。)
③姿勢を良くする(前かがみになると恐怖心や、敵対心が高まる。テーピングで強制的に良い姿勢にしても前向きな心になれたという研究もあるそうです)
④腹式呼吸をする(お腹で呼吸。2~10分でもよい。または2~3分の深呼吸でも効果あり)
⑤ランニングをする(20~30分のちょっとキツめの運動がよい。週二回のウォーキングでも良い)
⑥誰かとコミュニケーションをとる。(家族や友人などと良い関係を保つことは大切)
ベトナム戦争において捕まえられて
独房に長期間入れられた兵士の多くが
精神的におかしくなっていく中
それでも平静を保っていた兵士の幾人かは
牢屋の壁を叩いて隣にいた兵士と
コミュニケーションをとっていたそうです。
他人との関係がどれくらい人を元気付けるかと言う例でした。
⑦他人に親切にする(モラルコンパスという考え方。焦りや不安な気持ちを遠ざける効果があり。
つまり良い事を行う事が羅針盤の代わりになってくれるという事です。
親切と言っても簡単なことでよいです。
玄関の靴をそろえるとか、ごみを拾うとか、猫をかわいがるとか。
人はなにか困りごとに直面すればするほど
そのことで頭がいっぱいになりがちです。
そんな時他人のことを考える余裕を持つことで
逆にうまい解決方法が思いつくという事です。
まさに上手な解決策を見つける羅針盤になってくれるかのようです。
何かに困りああ右も左も行き止まりだと感じたら
少し部屋の相似でもしてみてください
もしかしたらああ後ろに道があったわ。2,3歩下がればいいんだ
などいいアイデアが浮かぶかもしれません。
自分に合ったものを選んで行うことが大切です。
今日紹介したいろいろな方法を試してみて
自分なりのトレーニングプログラムを考えてみて下さい。